両親学級に骨盤ケアを取り入れて― 骨盤位の推移 ①

Ⅰ.骨盤ケア導入の経緯

当院は、昨年の分娩件数が386件で16床の診療所である。開院して5年が経過した。 当初から、助産師外来を設立し妊産婦の保健指導を行ってきた。

助産師外来を行って気づいたことは、頻尿・残尿感・便秘・腰痛・恥骨痛・そけい部のつる感じなどの不定愁訴が予想より多いことである。これらは、お産が近づいた徴候として妊娠後期に訴えることが多い症状だが、近年、妊娠初期から訴える妊婦が増加している。その原因としては、妊娠前後からの運動不足により、骨盤の靱帯や筋肉が脆弱化し、本来ならリラキシンで妊娠後期にゆるむべき支持支帯が、妊娠初期から弛緩しすぎていることによると考えられる。さらに進行した場合には、膀胱下垂・子宮下垂・歩行困難なども見られる様になってきた。つまりこれらの症状を訴える妊産婦が、近年急増したのは妊娠子宮や骨盤内臓器が下垂していることが一つの理由であると考えられる*1)。当院は茨城県中心部の北に位置し、公共交通機関が少なく車依存社会であるため、このような妊産婦が多くなったものと考えられる。

これらの妊婦に、NPO法人母子整体研究会(以下母整研)で提唱している骨盤輪支持*2)を行ったところ、妊娠初期の腰痛・頻尿は軽減され、背筋が伸び、楽そうに「しゃんと歩けます」という言葉も聞かれるようになった。

これらのアプローチは、開院当初から行ってきたが、それだけでは改善しない方や腹部の張り・違和感を訴える妊婦の背景を分析してみると、妊娠期間中に一度は骨盤位になっていることが多い。また、これらの妊婦は、決して少なくないように感じられた。

これまで当院では、骨盤位の場合、膝胸位指導を行ってきたが、膝胸位は、妊婦にとってつらい姿勢であり、時間を要し苦痛が大きく、継続して実施するのが難しい。そこで、無理無く、時間も掛からない、操体法を導入することとした(写真1)。

写真1:操体法をする両親学級参加者
写真1:操体法をする両親学級参加者

 

これは、冷えの改善にも有効であり、結果腹部の緊張が改善し、骨盤位が改善すると言われている*3)。当初は、妊娠25~28週位に医師から骨盤位を指摘された妊婦に操体法の指導を始めたが、骨盤位になってしまってから直すより、骨盤位の予防をした方がよいと考え、妊娠初期からの操体法によるセルフケア導入を目指し両親学級に取り入れた。

今回その途中経過を調査したので報告する。

Ⅱ 骨盤ケアの実際

  1. 骨盤輪支持
  2. 両親学級での操体法指導
    2008年10月から妊娠16週~受講する両親学級4回の内、2回に導入し、さらに、2009年1月から全クラスで導入を開始した。

Ⅲ 調査対象者

平成19年1月から平成20年7月までの分娩者984名(IUFDは除く)

Ⅳ 骨盤位の経過(今回の骨盤位には横位も含む)

骨盤位の推移を見てみると、妊娠期間中に一度でも骨盤位になった妊婦(以下骨盤位総数)は分娩総数中平成19年24.3%、平成20年26.7%、平成21年40.7%と(図1)、年々増加している。

図1:骨盤位推移
図1:骨盤位推移

 

そのうち骨盤位のまま分娩に至ったのは、膝胸位指導時は、骨盤位総数中から平成19年16.5%、平成20年15.5%で、操体法導入後は、平成21年9.9%と減少している。 当院では、骨盤位は帝王切開である(以下骨盤位帝切)ため、これらの年の帝切総数率は、選択的帝王切開も含めて、平成19年24.3%、平成20年23.7%、平成21年23%であり、その中の骨盤位帝切率は、平成19年21.2%、平成20年23.1%で、平成21年は17.5%と減少している。平成19年と平成20年の差は、骨盤位総数は2.1%増、骨盤位帝切率は1.1%減と増減の差は少ないが、平成21年の骨盤位総数は、平成20年から14%と増加しているが、骨盤位帝切率は、5.6%減少している。

平成20年10月より、両親学級4回コースのうち2回に操体法を導入した。その後、平成21年1月から4回全クラス導入した事より、平成21年5・6月に分娩した妊婦が、平成21年1月の初回のクラスから多く参加していた事による効果と思われる。
操体法を導入した両親学級受講回数を調査したが(図2)、7 月現在で、まだ全員の妊婦が完全に参加するには至っていない。

図2:分娩月別の両親学級受講回数(平成21年)
図2:分娩月別の両親学級受講回数(平成21年)