トコちゃんベルトの安全性― 縦型オープンMRを用いての検証 ①

Ⅰ. 緒言

近年、妊娠期・産褥期のマイナートラブルに対するケアとして、骨盤ベルトの着用が普及している。骨盤ベルトは、骨盤を支持・固定する目的として開発されたものである(渡部, 2007) が、腰痛、骨盤痛だけでなく、子宮復古、子宮下垂・尿失禁の予防にも有効とされている。骨盤ベルトは実践でも用いられているとともに、効果の研究報告も増加している。

一方、産褥早期の上腹部の締め付けは、尿失禁や子宮下垂、将来の骨盤臓器脱を引き起こす要因であることも指摘されており(石川, 2003)、骨盤ベルトの安全性に関しては、十分に検証されていない。特に、着用部位の妥当性や、着用圧の安全性に関する検証が行われていない現状がある。

そこで我々は、以下の仮説について検証した。
1. 仮説1 「恥骨結合上での骨盤ベルト着用は、骨盤内臓器を下垂させない」
2. 仮説2 「骨盤ベルト着用は、分娩後の骨盤内臓器を下垂させない」
3. 仮説3 「ベルトの着用は安全である」

Ⅱ. 研究方法

1. 研究対象(表1)

1) 仮説1
研究対象は、経膣分娩の経験を有する年齢28~46歳の一般女性とした。

2) 仮説2 ・3
平成22年5~12月に、滋賀県下の4つの産科施設にて、正期産で単胎を経膣分娩した分娩後3~7日の女性とした。さらに、研究期間中に継続して骨盤ベルトの着用が可能である対象を選定した。

表1:対象の属性
表1:対象の属性

 

2. 実験用具

1) 骨盤ベルト
有限会社青葉製の「トコちゃんベルトⅡ®」(図1) を使用した。

図1:トコちゃんベルトⅡ
図1:トコちゃんベルトⅡ®

 

①骨盤ベルトの着用部位
仮説1 : A ; 骨盤ベルト非着用、B ; 上前腸骨棘上、C ; 恥骨結合上での着用とした(図2)。
仮説2 : C ; 恥骨結合上での着用とした。
仮説3 : C ; 恥骨結合上での着用とした。

図2:骨盤ベルトの着用部位
図2:骨盤ベルトの着用部位

 

②骨盤ベルトの着用指導方法
研究者が対象者に対し骨盤ベルトの着用指導をするにあたり、トコちゃんベルト®の考案者に直接指導を受けるとともに、NPO法人母子整体研究会が開講する「妊産婦のための整体、基礎セミナー講習会」を受講した。着用指導の際には、研究者が作成したパンフレットを用いた。考案者によると、産褥期はトコちゃんベルトⅠが適しているとのことであるが、諸般の事情により今回の研究にはトコちゃんベルトⅡ®を使用することとしたため、着用ポイントを次のようにした。両足の親指を付けて八の字に開き、少し前かがみになりながら両膝をあわせること、床の重い荷物を持ち上げるような要領で、お尻の穴をギュッとひきしめ骨盤ベルトを巻くこと。

着用部位の再現性を確保するため、対象者ごとに紐を用いて骨盤ベルトの下端から床までの垂直距離を測定し、その長さの紐を配布した(図3)。着圧の再現性については、基本圧での着用となるように対象者ごとに固定幅を決定し、骨盤ベルトに目印を付けた(図4)。

図3:着用部位
図3:着用部位
図4:恥骨結合上で圧計測
図4:恥骨結合上で圧計測