トコちゃんベルトの安全性― 縦型オープンMRを用いての検証 ③

4. 研究のプロトコール

1) 仮説1
A ; 骨盤ベルト非着用、B ; 上前腸骨棘上での骨盤ベルト着用、C ; 恥骨結合上での骨盤ベルト着用の3パターンでMRI 撮影を実施した。

2) 仮説2
MRI 撮影は、分娩後3 ~ 7日(以下、分娩後1 週間と示す)、1 か月、2 か月の3 時点とした。

3) 仮説3
対象者の骨盤ベルト着用の開始時期は、分娩当日から分娩後3日とした。対象者には、その後、2 か月間の継続した骨盤ベルト着用を依頼した。なお、着用は日中のみとした。

5. 分析方法

得られたデータは、統計パッケージソフトPASW Statistics18.0 for Windows を用いて分析した。 統計学的有意水準はp‹0.05 とした。 3 変数の比較には、それぞれWilcoxon signed-ranks test を行い、Bonferroni 法により調整された有意水準(α=0.05/2,α=0.01/2) にて判定した。

6. 倫理的配慮

本研究は、2009年12月22日に滋賀医科大学倫理委員会において審査を受け、承認されたものである。対象者には、本研究の趣旨、研究参加により予測される作用・副作用、データの保護、権利保護、身体的・心理的配慮について、十分に説明を行い同意を得た。

Ⅲ. 結果

1. 仮説1 「恥骨結合上での骨盤ベルト着用は、骨盤内臓器を下垂させない」の検証

A ; 骨盤ベルト非着用、B ; 上前腸骨棘上での骨盤ベルト着用、C ; 恥骨結合上での骨盤ベルト着用における内子宮口および膀胱頚部の位置を比較した。結果を図9に示した。結果、A ;骨盤ベルト非着用時に対し、C ; 恥骨結合上での骨盤ベルト着用時に、内子宮口の有意な拳上が認められた(p‹0.025)。しかし、A ; 骨盤ベルト非着用に対し、B ; 上前腸骨棘上での骨盤ベルト着用時では、有意な差はなかった。

図9:骨盤ベルト着用部位による内子宮口の位置の比較
図9:骨盤ベルト着用部位による内子宮口の位置の比較

 

2. 仮説2 「骨盤ベルト着用は、分娩後の骨盤内臓器を下垂させない」の検証

分娩後の女性において、着用の有無による内子宮口および膀胱頚部の位置を比較した。結果を図10 に示した。結果は、内子宮口の位置は、分娩後1 週間において、2時点に有意な差はなかった。同様に、分娩後1か月においても、2時点に有意な差はなかった。しかし、分娩後2か月において、着用による有意な差が認められた(p‹0.01)。

図10:分娩後各時点の骨盤ベルト着用の有無による内子宮口の位置の比較
図10:分娩後各時点の骨盤ベルト着用の有無による内子宮口の位置の比較

 

また、膀胱頚部の位置についても分娩後1週間において、2時点に有意な差はなかった。同様に、分娩後1か月においても、2時点に有意な差はなかった。しかし、分娩後2か月において、着用による有意な差が認められた(p‹0.01)。

3. 仮説3 「ベルトの着用は安全である」の検証

1) 骨盤ベルト着用による血流障害
安全性の検証として、骨盤ベルト着用による血流障害の有無を検証した。基本圧10 ~15mmHg で骨盤ベルトを着用し、その後15分、30分、1時間、2時間、4時間における下肢の血流変化を測定した。その結果、全ての測定時間において微小循環組織血流量の減少は認めず、着用による血流障害は生じないことを確認した。

2) 骨盤ベルト着用による副作用
実験期間中の骨盤ベルト着用による副作用の発症数を表2に示した。
着用群の分娩後1か月、2か月の時点において「下肢のしびれ感」「下肢の冷感」「下肢静脈瘤」「圧迫感」「疼痛」は認められなかった。

表2:骨盤ベルト着用による副作用の発症数 n=30
表2:骨盤ベルト着用による副作用の発症数 n=30

 

一方、「擦過傷」「搔痒感」「汗疹」では、それぞれ1~2名の者に発症を認めた。この対象者は、骨盤ベルトを下着の上からではなく、直接身体に着用していた。