骨盤ケアで改善! PART10妊娠に伴う腰背部痛・骨盤痛のメカニズム ③

5.腰背部痛・骨盤痛に対して、日常生活動作の中で気を付けたいこと

腰痛や骨盤周囲の疼痛を予防・軽減するためには普段から正しい姿勢を心がけること、そしてそのために正しい姿勢を維持できるだけの筋力をつけることが重要である。日常生活でも取り組みやすい対処を数例紹介する。

  1. 坐骨で座る: 坐骨に荷重するように座る(坐骨座り)と、上半身の重心が座面と体の接触している部分のほぼ真上にくるため、脊柱に余分なストレスがかかりにくい。また骨盤は適度に前傾すると、正しいアライメントを保ちやすく、内臓の圧迫が少なくなったり、円背にな りにくくなる。椅子に座る場合は座面の高さを足底が床に軽く着くよう設定し、できるだけ背もたれを使わないようにする。背もたれを利用する場合は背中との間にクッションなどを挟み、体幹や骨盤が過度に後傾しないよう工夫する。

    床に座る場合は臀部の下にバスタオルやクッションを敷いて、骨盤が少し高くなるようにすると骨盤が前傾し、正しい姿勢を作りやすくなる(図11)。また、脚を組んで座ったり、横座りをすると骨盤が歪みやすくなるため、避けた方がよい。

    図11 タオルを用いた座り方の例(正座の場合)
    図11 タオルを用いた座り方の例(正座の場合)
  2. 同一姿勢を取らない: 立位、座位、臥位のどの姿勢においても、長時間同一姿位を取り続けると、ある一定の筋や関節に負担がかかることになる。また、ヒトの重心は一点に固定されているのではなく常に動いているため、安定して同じ姿勢を取るためには筋肉が微調整を行う必要があるので、筋肉の疲労が蓄積しやすくなる。
  3. 床にある物を取る時は膝を曲げて: 膝や股関節を使わず腰椎だけに頼ると椎間関節や後面の組織への負担が増大し、痛みを生じやすくなる。洗顔時なども、かがむ時は必ず膝を曲げて腰を落とすようにする。
  4. 横になる時はリラックスできる姿勢を作る: 仰向けに寝る際は、脚を完全に伸ばしてしまうと大腿四頭筋やハムストリングスなどの膝や股関節周囲の筋肉が引き伸ばされた状態になり、力が抜けにくくなる。これらの筋肉をリラックスさせるためには、膝や股関節が軽く屈曲するように膝の下にクッションを入れると良い。また、横向きで寝る際は股の間にクッションを挟んだり、抱き枕などを抱えるようにすると下肢や腕の重みが軽減されリラックスしやすくなる。
  5. 可能な範囲で動く: 妊娠中は子宮の重みや易疲労性、バランス機能の低下、腰痛などで活動量が減少しがちである。しかし、活動量が減少すると持久力や筋力も低下し、更に自分の身体を支えられなくなり、腰痛や骨盤周囲の疼痛も発生しやすくなることが考えられる。産科医や助 産師と相談しながら、できる範囲で活動量を維持していくことが大切である。

6.おわりに

妊娠中の腰背部から骨盤にかけての疼痛は多くの妊婦が経験し、日常生活に影響を及ぼすマイナートラブルでありながら、検診の時間の中では産科医や助産師に相談しづらい。また、本来腰痛に対して治療を行う立場である整形外科医や理学療法士からは「妊娠中はリスクが高いから…」と受け付けてもらえないことが多い。そのため、どうすればよいのか分からない妊婦が多いのが現状ではないかと思う。

日本において、産前産後の女性に対する理学療法としてのアプローチはまだまだ認知度が低いが、海外においては身体機能面において理学療法士が介入するのがスタンダードとなっている国も多い。今後は産科医や助産師と理学療法士がお互いの専門分野を共有し、協力しながら、より良 いマタニティライフを送れるようなサポート体制の確立を急ぐことが大切である。

 

7.謝辞

本抄録の作成にあたり、整形外科医である京都大学大学院医学研究科人間健康科学系専攻リハビリテーション科学コース理学療法学講座運動機能開発学分野の青山朋樹准教授、同所属で理学療法士の山田実助教に多大なご指導・ご協力を頂き、ここに深謝いたします。また、測定にご協力いただいた妊婦の方々、健美サロン渡部京都サロンのスタッフの皆様に感謝の意を表します。
最後に、このような機会を頂き、発表にあたり多くのご助言を頂いたトコ・カイロプラクティック学院学院長の渡部信子先生に深謝の意を表します。

 

参考文献