骨盤ケアで改善! PART10妊婦の腰痛はマイナートラブルか? ②

Ⅳ.腰痛とは?

ここまで腰痛のお話をしてきましたが、どのような印象をお持ちでしょうか。整形外科医で、腰痛研究の第一人者の菊地9)は、腰痛について以下のように言っています。

腰痛は、研究者にとっても闇に迷い込むようで、いったん迷い込むと、なかなかその闇の中から抜け出せない。腰痛にはいくつも不思議なことがある。その最大の不思議さは、発生機序や病態が21 世紀を迎えた現在でも完全には解明されていないことである。そのため、腰痛の診療は、すべて科学的に立証された内容から構成されているわけではない。ひょっとしたら腰痛には現在の科学的概念では了解不可能な内容が存在しているのではないだろうか。

 

Ⅴ.妊婦の腰痛

岸田ら10)によると、腰痛は妊婦の約70%に認められる最も頻度の多い症状と言っています。
多くの妊婦が腰痛を経験するようです。この中に、腰痛に苦しんだ挙句に、抑うつ的になっている患者さんがいるかもしれません。

青山11)は妊婦の腰痛を診察する医療者側の問題点について次のように述べています。産科として、腰痛は通常の日常生活の活動においても生じる疾病であり、妊婦もあえて症状を訴えないため、大きな問題として取り上げられない可能性があるといいます。また、 整形外科として、妊娠期には体重増加や脊柱のアライメント変化から腰痛発生はやむを得ないものというような意識が潜在していると指摘しています。医療者側に、妊婦の腰痛を積極的に治療しようとしない傾向があるのかもしれません。

 

Ⅵ.「心因性腰痛」という診断が患者さんに与える影響

ここで、ひとりの患者さんをご紹介します。私が今まで診させて頂いた腰痛の患者さんの訴えを参考にして記述した実在しない方です。しかし、全くでたらめということではなく、どこにでもおられるような患者さんのモデルと思って下さい。

28歳の女性、Aさんです。現在、妊娠24週で、経過は順調なのですが、先のことをくよくよと考え、不安におそわれるそうです。約2か月前から腰が重い感じがして、今は痛くて仕方がないそうです。
ずっと我慢していましたが、あまりにも辛いので整形外科にかかったそうです。

整形外科医に「あなたの腰痛は心因性です。まあ、心配ないでしょう。通院は必要ありません」と言われたそうです。

「心因性」と言われ、Aさんは次のように考えたそうです。「こんなに痛いというのに、心因性なんて。私は、痛みを何とかして欲しいだけなのに。もう、どうしていいかわからない。痛くて仕方がない。辛い」

その後、Aさんは不眠や食欲低下を訴え、さらに、不安・焦燥が非常に強くなりました。「とうてい、出産まで漕ぎ着ける自信がない」と思い、絶望感におそわれるようになりました。

医師から「心因性腰痛」と言われ、心配ないと放置され、腰痛へのこだわりを強め、抑うつ的になっている患者さんを何人か診させて頂いたことがあります。「心因性腰痛」という診断名は患者さんを更なる不安に陥れる可能性があると思います。