骨盤ケアで改善! PART10妊婦の腰痛はマイナートラブルか? ③

Ⅶ.機能性身体症候群(Functional Somatic Syndrome : FSS)

福永ら12)は、FSS について次のように述べています。1990年頃から、身体機能の異常をとらえる検査法が進歩し、機能異常と症状の関係が次第に明らかになってきた。臓器の末梢知覚、運動機能、さらには免疫機能の変化が測定できるようになり、これらをFSSとして位置付けるようになった。

福永ら12)は、FSSの例として、過敏性腸症候群、月経前症候群、慢性骨盤痛、非心臓性胸痛、緊張型頭痛、顎関節症などを挙げています。

以前は「心因性」と考えられていたものが、検査技術の進歩により、機能的異常が見出され、「心因性」という言葉では説明不能になったと考えて良いだろうと思います。

野口13)は、FSSには精神的、心理的要素が関与しているものの、心因論からすべてを説明することはできないゆえ、身体科からの紹介で、しばしばいわれるように「身体的に異常がないから精神科だと思います」という見方は正しくないことになると述べています。

妊婦のある種の腰痛は、FSSと考えて良いと思われます。リラキシンの分泌による靭帯の弛緩は、腰椎の不安定性をまねき腰痛を引き起こす可能性があるでしょう。脊柱アライメントの変化もしかりです。筋に由来する腰痛も見逃せません。

 

Ⅷ.「心因性」を控える

「器質疾患が認められないので心因性腰痛と考える」という内容の紹介状を受け取ることがあります。「心因性腰痛」という病名を用いるならば、心因が明確であり、それが腰痛の成因に重要な役割を果たしていることが明らかなときのみにするべきと考えます。

あくまでも私の経験の範囲で言えることですが、慢性腰痛の心因が明らかになることはめったにないと思われます。

 

Ⅸ.妊婦の腰痛の治療

このことに関しては、皆様の方がより詳しいと思いますので、私は精神科医として少しだけ述べたいと思います。

機能性の異常(FSS)を考え対応するならば、さらしや骨盤輪支持ベルトを用いたり、温めたり、運動療法などが有効でしょう。

上記のような対応をしつつ、継続的に話を十分に聞く、継続的に寄り添うことが何よりも重要と考えます。出産の専門家である助産師が上記のことを実践すれば、妊婦は安心し、腰痛の苦痛もやわらぐのではないかと想像します。

先ほどのAさんの場合は、精神科に紹介するのが良いでしょう。しかし、精神科に紹介して事足れりではありません。紹介をするだけでは、患者さんは見捨てられたと思うでしょう。大事なことは、助産師、産科、整形外科などの患者を取り巻くスタッフが、今まで通り、関わるというはっきりとしたメッセージを患者さんに伝える必要があると思います。先程も述べたように継続的に寄り添うことが重要です。

以上、みてきましたように、妊婦の腰痛は、妊娠の継続をも危うくするような側面があることから、マイナートラブルなどではなく、積極的な関わりが必要と思われます。

 

参考文献