体操しようとしない産婦にも使える安産体操― “難産候補妊婦”の入院から分娩までのケア ①

Ⅰ. はじめに

私は助産師になってちょうど30年。新人時代は5年ほど都立病院に勤め、その後、夫の仕事の都合で青森県八戸市に帰った。ちょうどその頃、開業準備中の個人病院があり、そこに就職した。2007年に初めて骨盤ケアセミナーを受けたが、そこで学んだ体操や技術は、勤務していた医院の「歩かない、体操しようとしない妊産婦」に、そのまま使うことはできなかった。そんな産婦でもできるよう、アレンジしながら活用していたところ、スムーズなお産が増え、出血も少なくなり、私にとって骨盤ケアは、なくてはならない技術となった。

ところが、その医院が分娩の取り扱いをやめることとなり、今年の3月末で退職した。23年間勤めた職場を失った私に「アンタの開発したアレンジ技を、全国の助産師に教えて!」との渡部信子先生の“ツルの一声”がかかり、トコ企画主催の「順子姉さんの安産誘導セミナー」の、講師を引き受けることとなった。

今日は、難産候補産婦でも、入院から分娩までにやればなんとか安産に誘導できる、検査とケアについてご紹介する。

 

Ⅱ. 出産年齢の女性の成長期の背景

地元青森県八戸市では、高校を卒業したらすぐに車の免許を取り、車は大人1人に1台が当たり前。自宅から小学校まで、親が自家用車で送迎することも多く、小学校の遠足は、目的地までほとんど歩かないバス遠足。そして、ゆとり教育で体育の時間が削られた。脱ゆとりになった後も体育の時間は減ったままだ。小学校では体力作りのために早朝マラソンや、縄跳び競争があるが、頑張る子は頑張るけどやりたくない子はやらない。頑張ってもできない子と、やればできるのにサボっている子の区別ができないので、ペナルティなしで体力作りをしないまま育つ。

そして妊娠。ここで体作りをするべき時にサボっていたツケを払うことになる。妊娠する前から骨盤はゆるゆる。すぐにでも3kgの赤ちゃんを産めるくらいゆるゆる。元気な妊娠生活を送れるはずがない。

 

Ⅲ. 妊娠中の生活

八戸の妊婦は歩いて5分のスーパー、3分のドラッグストアにも車で行く。人によっては道路を渡ってすぐのコンビニにさえ、車で行く。

妊娠に気づいて、無理しないように気をつけ始めると、もっと歩かなくなる(図1)。そうやって動かないように、動かないようにしているうちに、歩く体力がさらに無くなる。立っているのがしんどいどころか、座っているのもしんどい。寝ていてもしんどい。

図1:妊娠中の生活
図1:妊娠中の生活

 

「座っていてもしんどい」のあたりで「切迫早産疑い」の診断がつき、「安静に」の指示や「就業不可」の診断書が出る。安静の間に、体重もうなぎ登り。15kg増は当たり前、20kg増もザラ、筋肉が落ちて体重が増えるから、我が身を支える筋力が追いつかず、ますます動かなくなり、動けなくなる。でも、時期が来れば、体の準備をしていなくても陣痛は来る。こんなことでは、安産できる要素が見当たらない。