体操しようとしない産婦にも使える安産体操― “難産候補産婦”の入院から分娩までのケア ③
Ⅵ. 「骨盤を整える=体操」の必要性
分娩中は「入院→分娩→分娩後」と体操をし続けなければならない。でなければ、「曲がり捻じれ癖」でどんどん安産から遠のいてしまう。「陣痛で痛い時に体操を続けてもらう」ということになるので「痛いのに動けと言った。意地悪な人」ととられることも多々あるが、ジッとしていてはゆがんだ骨盤は整わないし、不正軸陥入・回旋異常は直らない。ただただ、吸引分娩や帝王切開の時期を待っているだけになる。悪者になってでも、その人の「今するべき体操をタイミング良く指導する」ことが大事。

図6の様な丸くない骨盤入口面では、不正軸陥入になり、骨盤の余計な凸凹に児頭はぶつかって引っかかり、児頭の圧迫は早くから起きearly deceleration(早発一過性徐脈)が繰り返し出現し、骨盤が丸くなるまで続く。児頭の下降は悪く、降りてきても、低在横定位になりやすい。
早い時期に骨盤を丸くする体操をしてそれらを予防するか、低在横定位になったと気づいてから、体操を始めるか。何もしないで、吸引分娩できるところまで下がってくるのを待つか、待ってもダメで帝王切開になるか。凸凹が改善され、回旋が良くなる様に体操をすれば、産まれないほどの回旋異常は、回避できる可能性も出てくるし、心音が悪化しなければ待てる。
たとえずっとそばに寄り添い、腰をさすってあげていても、骨盤を丸くしないで“待つお産”はただの“放置”。骨盤ケアで丸い骨盤にすることで、産婦も胎児も元気な状態をキープできて、安心して“待つお産”に取り組めると思う。
Ⅶ. 分娩時の骨盤ケアの流れ
検査
レオポルド胎児触診法(図7):
胎児の胎位・胎向・胎勢・・・斜めになっていないか
股関節の可動性の検査:お産の時足を開けるのか

アイテム
フェイスタオル(結び目を作る=タオル玉)
体操
上半身:挙手の操体法 体側伸ばし 脇縮め 上体ひねり(さすりながら)
下半身:下肢上下 → 膝持ってクルクル片足バージョン → 両足バージョン(タオル玉)
全身:お尻フリフリ片手伸ばし
深呼吸のために:さする タオル体操
その他
陥入がうまくいかないで下がりすぎていたら、骨盤高位で仕切り直し
分娩体位を取る時の注意
無理に脚を横に開かない
児頭が下降し、排臨近くなったら、膝を閉じる方向に脚を動かす(坐骨間を広げる)
産後
出血を少なく・後陣痛対策・子宮下垂対策
子宮底の輪状マッサージは、子宮を押し下げない 子宮を引き上げ、骨盤輪支持
1. 大事な検査 レオポルド胎児触診法
モニターを着ける時は、お腹の形を診て、きちんと触診し、今の胎児の姿勢をイメージすることが大切である。骨盤ケアに出会う前の私は、心音が拾えれば良し。「児背はどっちかなー。はい、当たりー、ラッキー!」程度だった。
今は「児背はどっちかなー」の後「背中が丸くなってるか、まっすぐか」「背中が前を向いてるか、後ろを向いてないか」くらいは診るようにしている。分娩がどの辺で進まなくなるか予想しやすくなった(図8.9)。


子宮底にお尻は触れるのに、児背の硬さが触れなかったら顔は前を向いている。内診ではまだ小泉門・大泉門を判別できない児頭の高さでも、第二回旋の異常を予測できる。毎回エコーで確認している病院もあると聞くが、手でわかれば、それに越したことはない。第二回旋の異常も「お尻フリフリ片手伸ばし体操」で改善できることが多い(図16)。

お腹の形も観察。丸いのか、縦長か、横長か、斜めにゆがんでいるのか。丸いお腹は取りあえず合格。縦長は半屈位になりやすいので、頭頂部や大泉門が先進しやすい。斜めのお腹は、横座りで座るクセのせいで、いつも子宮が片方の肋骨と骨盤に圧迫されて縮んでいた証拠。陣痛の間も同じ姿勢で過ごすので、児頭は骨盤入口面に対して、斜めに陥入してくる。不正軸陥入になるか、もうなっている。
お腹の外診は仰臥位でだけでは不十分。立位で、横から見ることも大切。モニターをはずして、立ち上がった時、必ずお腹の形を見て、尖腹(図10)ならば対策が必要。胎児が前に倒れすぎていて、児の軸を縦にしないと恥骨にぶつかり、降りてこない。→「お尻フリフリ片手伸ばし+さらし」
