視知覚(ビジョン)・協調運動の発達を促す育児支援― 寝返り・ハイハイの重要性を考えよう ②

Ⅲ.視知覚(ビジョン)の発達、視力と視知覚の違い

まずは、見ることに関する言葉の定義を確認しておきたい。

1.固視(Vision Fixation)

固視とは、ある物を注意して見ている「状態」をいう。このとき基本的に物体は静止して見える。

  • 図1 固視(Vision Fixation)とは
    ある物を注意して見ている「状態」のこと。10秒以上持続して見ていられるのが理想であるが、5秒間見ることができれば良しとする。

例えば、目の前に置かれた1個の消しゴムを、キョロキョロすることなく、ジッと見続けることができることをいう。「眼球運動」を確認するにあたっての大前提は、「固視が正確である」ということになる。

斜視の場合は「両眼固視」は不可能であり、「単眼固視」ではあっても「偏心固視」という状態になることもある。弱視や眼球振盪のような機能的・神経生理学的な要因があれば固視は不安定になる。発達に問題を持つ児は固視が苦手で、すぐに視線を外してしまう。

頭が動いたときにこれと反対方向に眼球を動かして網膜に映る外界の像のブレを防ぎ、頭が動いているときに物が見えにくくならないように働くのが前庭動眼反射(VOR)である。眼・脳・体の相互関係は生後1年の間に基礎能力が確立される。頭を回転させたときにVORの役割が大きく関与し、眼球が反対方向に回転することで固視を維持する。

つまり、片方しか向けない(=向き癖)状態が続くと、VORが現れにくくなり、固視することが難しくなる可能性があると考えられる(図2)。

図2
図2

2.注視(Gaze)=1点を見ようとする

3.アイコンタクト=目を見る、視線を交わす

4.追視(Pursuit)=追従性眼球運動

追視とは、視覚対象物が動いているとき、眼球がその動きを追従してゆっくり動き、注視を続けること。ゆっくり動くものを追視するのが滑動性眼球運動(スムースパシュート)である。パシュートが苦手な場合、スポーツ、特に球技のパフォーマンスが低下することが考えられる。ボールを上手に追えないばかりでなく、卓球・テニス・バドミントンのように動くボールを打とうとする際には、頭が動いてしまうので、的確にボールにラケットを当てることが難しくなる。

5.サッケード=衝動性眼球運動

サッケードとは、中心窩固視を得るために行われるすばやい共同性眼球運動のこと。

サッケードが不正確だと次の区切りに正確に視線を飛ばすことができないので、同じところを2回読んだり、行を飛ばしたりし、読書効率や理解は著しく低下する(図3)。そのほかにも、探し物が苦手だったり、黒板に書かれたものを写すのが遅かったり、マークシート形式のテストが苦手だったり、などといったことも考えられる。正確なサッケードをするためには頭の動きは不必要だが、サッケードが苦手な場合は、これを頭の動きで補おうとすることがあるため、悪循環に陥ってしまうことになる。なお、不正確なサッケードは、トレーニングで改善できるケースも多い。

図3
図3

6.瞬間視

読書をするとき、私達の眼は、固視→サッケード→固視→サッケード→固視…というサイクルを繰り返している。つまり、文章を「あるまとまり」単位で固視し、次いで、次のまとまりをサッケードにより眼を動かして固視して、そしてまたサッケードにより次のまとまりへと進んでいく。