座長ご挨拶

日常生活の全てを学べるお寺って素敵

今回のランチョンセミナーの演者の二人は、お寺の伽藍を使って地域のお母さん達が子育てなどを学べる場を開いています。それをしやすくしているのはお二人とも「お寺の住職の妻」という立場です。しかも、どちらも曹洞宗(開祖は道元禅師)のお寺だという点も共通しています。

「お寺で子育てを学ぶなんて」などと思わないでくださいね。そもそも、お寺は地域の人々が集う場であり、子育てや暮らしの知恵の交換の場だったそうです。ところが今では日常生活とはかけ離れ、葬式や法事のときにしか足を運ばない場となってしまいました。

でも、それではもったいないと思います。骨盤ケアなどの教室や子育てサークルなどを開こうと思っても、会場費が高いとか、安いところはなかなか借りられないと悩んでいる人がいっぱいいるのですからね。その点、お寺には広い伽藍があるので、お二人は会場確保の苦労をしなくていいのです。羨ましい限りです。

そもそも、伽藍とは修行の場のことだそうで、それがいつもガラーンとしていたのではもったいないと思います。現代においては、子育て・料理をはじめ生活の全てについて学ぶ場となってこそ、伽藍と呼ぶにふさわしい場となるのではないでしょうか。

それに、私達日本人の誰もが普通にしている生活、朝起きたら顔を洗い、口をゆすぎ、和食を食べ、歯を磨くという生活の普及に尽力された人は、なんと道元さんなのです。それどころか、無形文化遺産となった和食のルーツとなった精進料理を中国(宋)から日本に運び広めたのも道元さんなのです。

当時の日本の仏教界には、日常の実践を重視する考え方は十分に伝わっていなくて、貴族ですら精進料理のように調理された食事はしていなかったそうです。それは13世紀のことですから、まだ800年足らずの歴史しかありません。その間に日本は大きく変わってしまいました。食や育児の乱れが目に余る現代こそ、道元さんの教えを学ぶべき時ではないでしょうか。食も育児もおろそかにしては楽しい暮らしも良い仕事もできません。

馬地先生には豊富な妊娠出産育児の中での工夫や子ども達とご自身の変化、森田先生には発達に関する最新情報をお話しいただきます。お二人の演題に共通しているのは、子どもの成長発達には胎児期・乳児期のケアが大切であること、それから、何らかのトラブルを持って生まれてきたとしても、早急な対処で速やかに改善するということです。そのまま「様子観察」という名の「放置」をしていたのでは改善を遅らせてしまいます。

お二人が暮らしておられるようなお寺が、日本の各地にい っぱいあると素敵ですね。この講演要旨集が妊娠出産育児教育に関わる一人でも多くの方の心に届くことを願いつつ、ご挨拶といたします。