座長ご挨拶
骨産道を診ていますか?の企画にあたって
お産がうまく進行するための必須条件は産道、娩出力、胎児であることはよく知られています。最近骨産道をあまり診ていない医療者が増えていることが心配です。昔は「ニイサントフロニイク」は産科医、助産師なら誰でも知っていました。「ニイサントフロニイク」は棘間径(23cm)、稜間径(26cm)、外結合(19cm)の正常値を示したものです。最近、狭骨盤もなく、身長も十分あるのに回旋異常、進入異常になって遷延分娩、分娩停止に陥ってしまう症例が増えています。このような症例では類人猿型の骨盤が多いことが指摘されています。人間は生まれた時は誰でも類人猿型の骨盤をしていますが、その後変化し、女性は思春期の終わる頃に女性型骨盤となります。最近の女性では新生児時期から成人期になる過程で骨盤が変化しない方が増加しているのかもしれません。骨盤は産道だけでなく、娩出力、胎児にとっても重要です。骨盤に歪みがあると妊娠時腰痛、子宮収縮が発生しやすくなりますし、産褥期の子宮復古にも悪影響します。胎勢は骨盤形態にも関係しますが、胎勢が出生後の先天股関節脱臼と関連するという報告もあります。骨盤は妊娠、分娩、産褥の要とも言えます。骨盤をしっかり診ることはお産を扱う医療者にとって極めて重要なことです。本ワークショップにより骨盤を診る重要性を再認識していただければ幸いです。