八戸市における“妊婦ロコモ”の実態と、私の取り組み②

3.運転時

車のシートも「仙骨座り」と「腰椎後彎」を助長する。

運転席に乗り込む時、左側の坐骨に強い衝撃が加わり、寛骨が上方に変位する。続いて、横に滑らせて座るため、腸骨は外側に坐骨は内側に変位する。坐骨結節が内側に変位するということは、つまり、坐骨棘も内側に変位することになる。さらに、右足でアクセル・ブレーキを踏むため、左の坐骨に斜め外側からの加重がかかり続ける。その結果、図5 のように骨盤が変形し、仙腸関節周囲に痛みを訴える妊婦が多い。

図 5 車と骨盤の歪み
図 5 車と骨盤の歪み
このようになった骨盤の左後上腸骨棘は突出している。仙腸関節を骨盤の内側にも段差が生じ、分娩時にこの部分を児頭の最大周囲が通過する時に、児頭も骨盤も強い圧迫を受ける。産婦は早くから耐えがたい痛みを訴え、胎児は、陣痛発作のたびにVariable に見えるDeceleration を起こす。Early Decelerationには見えないため、臍帯因子によるものかと思われがちだが、仙腸関節の段差を解消する様に操体法や体操をすれば、ほとんどの場合、Deceleration は解消する。

4.寝姿勢

体幹は右か左に大きくカーブし、爪先は内側に向けた尖足であることが多い(図6)。すると、坐骨は外方に開き、骨盤底は拡大する。

図6 寝姿勢
図6 寝姿勢

分娩時にこのような姿勢を取るのは、筋肉のバランスがこのようになっているからであり、真っ直ぐになるように姿勢を直すと違和感を訴える。

また、この姿勢だと仙骨の突出部分が床に当たる人が多く、仰臥位を好まず、左右どちらか一方の側臥位を好む。

すると、いつも決まった側の腸骨稜が圧迫され、骨盤は縦長になる(図7)。この時、仙腸関節の仙腸靱帯が引き延ばされ、仙骨はさらに後方に飛び出す。その結果、濶部が広くなりすぎるので、第一、第二回旋ともに異常となりがちとなる。

図 7 シムス位
図 7 シムス位

同時に、上側の下肢は内旋し続けるので、大転子はますます飛び出すため、外旋筋の弱い現代の妊婦に、シムス位は骨盤全体をねじり、大転子を飛び出させることになるため勧めない。

飛び出した大転子は、前方に引かれ続けるので外旋筋(中でも梨状筋) が緊張し、仙骨を横に引っ張るため、仙骨は横に引き寄せられる。また、飛び出した大転子が当たると、妊婦は痛みのためますます反対側を向くことがなくなる。

側臥位では上側の膝が正中側に落ちていかないように、大きなクッションを両膝の間に挟み、大転子が飛び出させない工夫が必要である。

5.セミファーラー位

現代の腰椎前彎のない妊婦がセミファーラー位になると、腰椎は図8 のように、後彎するため、仙骨尖部は前方に、仙骨底部は後方に変位する。そして仙骨座りを助長する。すると、肋骨も子宮も下垂し、肋骨が子宮を圧迫し、子宮収縮を招く。

図 8 頸椎・腰椎後彎
図 8 頸椎・腰椎後彎

セミファーラー位では、せめて、高すぎる枕をやめ、首とウエストに丸めたバスタオルを当て、首と腰部の脊柱前彎を保持することが大切である(図9)。

図 9 頸椎・腰椎前彎
図 9 頸椎・腰椎前彎

しかし、それでも仙骨は座面に当たるため、妊産婦は痛みを訴える。それで、上半身を挙上したままの側臥位にする人もいるが、体幹や骨盤が左右にずれ、かつ、ねじれるので、私はさせない(図10)。

図 10 セミファーラー位での側臥位
図 10 セミファーラー位での側臥位
側臥位を取らせる時は、背もたれ部分を下げてフラットにし、枕の高さを調整し、下ウエスト部分にタオルを入れ、膝が大転子と水平の状態にな って、頭・背中・骨盤・胎児の軸がそろう様に工夫する(図 11)。
図 11 体の軸を整えた側臥位
図 11 体の軸を整えた側臥位