骨盤ケアで改善! PART2妊娠初期からの骨盤ケアの実際 ③

7.妊娠高血圧症候群の予防は妊娠初期から

2005 年11月、日本助産師会関東甲信越静ブロック研修会で、浜松医科大学産婦人科教授の金山先生が「妊娠高血圧症候群を予防するには、骨盤内の血液循環を改善することが大切。特に、胎盤の原型が完成する16週までの血液循環が良いことが望ましい」と講演された。このことからも、妊娠初期から骨盤ケアを導入することが大切であると、近年ますます考えるようになった。

8.骨盤ケアの実際

骨盤ケアは、まずヒップサイズの計測。立位と骨盤高位で計測し、その差で骨盤の緩みの程度をみる。骨盤の緩みの程度がわかったら、妊娠期の骨盤が緩むメカニズムをわかりやすく説明し、不快症状などの自覚症状の有無を聞き、操体法を行ってゆがみを少し整えたうえで、トコちゃんベルトを巻く。ゆがみや腰痛が強い場合などはテイクケアを行う。
ベルトを巻く位置や巻き方は骨盤の形状により個人差があるため、妊婦に合う着用方法を見つけ出し、自分でベルトを巻けるように指導。2~3日ベルトを貸し出し、自宅に帰ってもベルトを巻いて過ごしていただく。後日再来院時、巻き方が正しいか、ベルトが合っているか、操体法が実施できているかを確認。その後は、妊婦健診毎にベルトの着用方法が正しいか、不具合はないか確認していく。

図4 ヒップサイズの測定
図4 ヒップサイズの測定 立位と骨盤高位で計測し その差で骨盤の緩みの程度をみる (有)青葉「トコちゃんのマタニティケア ハンドブック」より

 

陣痛発来時もベルトは着用したまま過ごしてもらう。来院後、可能ならば間歇時に操体法を行い、分娩準備の段階でゴムチューブに巻き替える。児娩出・胎盤娩出はゴムチューブを巻いたままで行い、骨盤がゆがまないようにしておく。児娩出時はフリースタイルであるが、胎盤娩出は仰臥位で骨盤高位をとる。

この時、直径30センチくらいの丸型の洗濯ネットに2/3 程度ビーズを入れたクッションを用いているが、このお手製クッションは長時間骨盤高位をとっても苦痛が少ないと好評。胎盤娩出後は、骨盤高位のままパットを交換し、産後2時間値までそのままで過ごす。その間、足指回しを実施。2 時間値の出血の状況を判断した上で骨盤高位をやめ、ゴムチューブからトコちゃんベルトに交換する。

図5 お手製ビーズクッション
図5 お手製ビーズクッション

 

この時、骨盤ゆらゆらを実施。初回歩行時は必ず助産師が付き添い、トイレの時にもベルトを巻いたまま排尿。自室に戻ってからベルトを巻きなおす。産後は、毎日子宮収縮観察時にベルトの着用状況を観察。必要時、テイクケアを実施。児は出生直後から丸々抱っこやCの字の寝かせ方を実施し、ゆがみ防止に努める。

9.搬送事例の減少

妊娠初期から骨盤ケアを行うことで、妊婦は妊娠期をセルフケアできるようになるため、ほとんど手がかからなくなった。むしろ、他施設にかかっている妊婦が、腰痛や逆子などのため施術希望で来院されると、時間がかかり大変である。また、骨盤ケアを行うことで、分娩時間が短縮、出血量が100cc以下のケースが増えた。

何より、微弱陣痛・遷延分娩、妊娠高血圧症候群が減少したことにより、搬送件数が2003年から2006年の4年間では平均年間10.1%だったが、2007年から2008年は平均年間5.45%に半減した。これは、妊娠初期からケアを開始した成果と考えられる。

10.お茶畑助産院開業

藤枝第一助産院で2年勤務した頃、とりあえずと思って出張専門の開業届けを出した。出したのと同時に自分自身が妊娠。数ヵ月後、近所の妊婦から分娩依頼があり、自身の出産までは藤枝第一助産院で勤務し、産後5ヶ月で開業初の分娩介助をすることになった。

当院も藤枝第一助産院同様、妊娠初期より骨盤ケアをスタンダードケアとして行い、お産の依頼を受けた時点で骨盤ケアについて説明・実施している。

私が子育て中ということもあり、1から2ヶ月に1件というペースでお産を受けており、妊婦健診は1時間以上かけてゆっくり妊婦の話を聞くことができる。「上の子が男の子でしょ。すごくやんちゃなので、悪さするとつい走って追いかけてしまう。幼稚園の他のママから妊婦なのに身軽に走っているって驚かれました。これしてると走れちゃうんですよね」「三人目の妊娠で自分の年齢も若くないから大変だと思っていたのに、今までの妊娠生活の中で一番快適で身体が楽に過ごせた」「立ち仕事なので、必ずベルトしています。一度、ベルトしていなかった日、午後になると辛かった。なので、手放せません。お産の前日まで働いていました」などなど「骨盤ケアとの出会えてよかった」と語り合い、会話が弾む。

開業当初、産婦は年齢も若く経験も少ない私に対して多少なりとも不安を抱いていたと思うが、骨盤ケアにより快適に妊娠生活を送れるようになったことで、産婦から信頼感を得やすくなりコミュニケーションを取りやすくなったと感じた。助産師に対する信頼感が深まることで、お産で身を任せてもよいと思えるのではないだろうか。

当院でも分娩時の骨盤ケアは、藤枝第一助産院と同様に行い、胎盤娩出後は、アメジストの直後パット トコ式を使用している。1/4幅の晒しがセットされており、この晒で骨盤輪をしっかり固定する。このセットだと、骨盤ケアの研修を受けていない助産師と一緒に分娩介助する場合でも、簡便に着用できるので重宝している。

図6 さらしによる骨盤輪固定 アメジスト 直後パット トコ式
図6 さらしによる骨盤輪固定 アメジスト 直後パット トコ式(大衛株式会社)着用説明図より

 

当院においても、分娩時の出血量が少なく、分娩所要時間が短いケースが多い印象だ。分娩件数が少ないので参考にはならないかもしれないが、現在までの母体搬送件数は0件。また、助産院や自宅出産を希望している妊婦にとって、産みたい場所でお産できることはとても重要であり、助産師にとっても、希望にかなった安楽なお産の手伝いができることは助産師冥利につきる。