骨盤ケアで改善! PART2妊娠初期からの骨盤ケアの実際 ④

11.広がる骨盤ケアの輪

骨盤ケアの良さを実感した妊婦や産婦は、友人や知人にも骨盤ケアを勧める。時折「実母が腰痛で」と実母や夫の骨盤ケアを依頼されることもある。次第に口コミで「骨盤ケアをして欲しい」と他院で出産される妊婦さんや産後のママから依頼が来るようになった。

中には前回の分娩後から子宮脱になった20代の初産婦が2人いた。2人とも分娩時に促進剤やクリステレルやいきむお産を経験していた。

「産後に何か違和感があると言ったけど、そのうち良くなると言われ見てももらえなかった。退院診察の時に子宮が出ていることがわかって大騒ぎになった。誰に相談したらいいのかわからなかった」「今回妊娠してまだ3ヶ月なのに、くしゃみをしただけで子宮が出てきた。こんな身体だと切迫早産になりますよね。上の子がまだ小さいから入院したくない」と語っていた。

彼女達は第2子妊娠初期から骨盤ケアをしているため、現在快適に過ごせている。しかし、もし前回の産後直後からでも骨盤ケアをしていれば、子宮脱にはならずに済んだのではないかと思う。こうした話を聞くにつれ、妊娠初期から骨盤ケアをする施設が増えて欲しいと思う。

12.母乳育児と骨盤ケア

お茶畑助産院では、出産した母親達と年に2回お茶会をしている。その時に、児がゆがみなく育っているか、母乳育児はどうかなど話を聞く。頻回授乳が大変という話は聞くが、母乳育児が困難・育てにくいという話は聞かない。妊娠中からの骨盤ケアをすることで、母子共に産後のゆがみが少なく、その後の育てやすさにつながっていると考える。

保健センターの依頼で一ヶ月訪問をした際に出会う母子は、母子共にゆがんでおり、おっぱいトラブルを抱えている方が多い。しかし、一人当たり40分の保健指導では到底骨盤ケアの話をする時間はなく、簡単に紹介する程度にとどまってしまう。妊娠初期から骨盤ケアをしているケースと、全然していないケースでは、育児のスタートが全然違う。

13.妊娠前に伝えたい

もっと多くの妊婦に骨盤ケアの大切さを伝えたいと考えるようになり、始めた活動が子育て支援センターでの「助産師と語る会」だ。月1回10~15 人、0~2歳児を育てている母親に、骨盤ケアや赤ちゃんの抱き方や寝かせ方などの話をする。「この子を産む前に知りたかった」「頭がゆがんでいるとわかっていたけど、誰に聞いたらいいのかわからなかった」と皆口を揃えて言う。

図7 1か月検診で赤ちゃんの頭のゆがみチェック
図7 1か月検診で赤ちゃんの頭のゆがみチェック

 

「次のお子さんを授かったらすぐに骨盤ケアを始めましょう」と話すものの「妊娠初期から骨盤ケアさえしていれば…」と悲しい気持ちになる。「地域に助産師がいます。妊娠・出産・育児のサポーターは助産師です」と伝えていきたい。

14.自分でも実感

2006年7月、妊娠8週になった時、経腹エコーで胎児を見ようとしたが見えず、骨盤高位にしたところ胎児を確認できた。私自身も骨盤の緩みが生じ、子宮下垂気味であることに気が付いた。そこで、トコちゃんベルトⅡの着用を開始した。当初、まだ上手くベルトを着用できなかったが、研修を受けてからは徐々に上手くなり、中期頃には一日中巻き直すことなく快適に過ごせるようになった。

しかし次第に、恥骨痛と腰痛が少し起きてきたため、晒しとベルトでダブル固定をしたところ、妊娠34週まで分娩介助も十分にできた。

産後5ヶ月の時の開業第一号の分娩介助時にも、自身の体調に不安を抱くことなく仕事に専念することができた。働いている妊婦には初期からの骨盤ケアは不可欠であると、身をもって体験した。私同様、現在妊娠・子育てをしながら働いている助産師には、ぜひこのケアを体験し、ケアの良さを実感し、妊産婦に広めていって欲しいものである。

15.まとめ

昨今の出産を取り巻く環境の変化により、多くの施設で助産師外来を立ち上げる傾向にある。現状では妊娠初期は医師の診察が主で助産師に任されておらず、20週を過ぎた段階から助産師外来に委ねられる傾向にある。しかし、妊娠初期からの骨盤ケアこそ大切であり、20週からでは遅すぎると言いたい。妊娠初期からの助産師がケアできるシステム作りを、ぜひとも検討していただきたい。

妊娠初期からの手厚い骨盤ケアで、マイナートラブルを予防し、丸いGSを育て、心地よいと感じられる日々を送れるように援助することは、安産と楽しい育児につながる。何より、不定愁訴を解決する方法を導き出してくれる助産師への信頼感は篤く、妊婦自身が主体的に分娩に臨むことにつながる。そのためには、助産師が骨盤ケアの必要性を認識し、確実な技術を習得することが必要である。

近い将来、妊娠初期からの骨盤ケアがスタンダードケアとなり、妊産婦から助産師を求めるようなるであろう。つまり、信頼関係は、確かな骨盤ケア技術の上に成り立つと考える。