骨盤ケアで改善! PART9発達外来の子どもから見えてくる胎児姿勢・新生児ケアの重要性 ②

Ⅱ.胎児環境と姿勢コントロールの密接な関係

胎芽期において、受精後、肢芽は腹側に向かって伸び48日までは手足がそれぞれ向かい合う位置関係を取り、その後54日までに股関節が内旋し、足底は尾側を向くようになる(図1)。膝は体の正面に位置し、歩行に適した第一段階の変化を遂げる。股関節の変化は生後も続き、上方から見ると前方に約30度ねじれている新生児の大腿骨頭は、その後の骨成長と筋活動の増加で6歳までに約15度まで減少すると言われている*3)。

図1 胎芽期における形態学的回転
図1 胎芽期における形態学的回転

 

在胎16~40週の胎児は屈曲姿勢で防衛能力が発達する。また28週ころ、更に屈曲姿勢が増強し運動の準備が進み、狭い子宮内は正中位指向とアライメントの発達を促す。屈曲肢位は頸部、背部筋の完全伸張を引き起こし、体幹の屈曲姿勢は、肩・肘・股関節の屈曲活動を保障する。屈曲している頸部は口腔内の陰圧を高くし、口唇を楽に強く閉じ、羊水を嚥下するようになる。頸部屈曲で顔面筋活動が安定すると、哺乳、嚥下の発達を促進し、指しゃぶり・手遊びを安定して行い、眼球運動の発達も促進されること、新生児の正常な頸部・体幹の屈曲による安定は鼻呼吸パターンを成熟させることが、超音波エコー画像診断装置による胎児・新生児の研究で報告されている*3)、4)、5)。

子宮内環境で経験する単純かつ豊富な反復運動と、子宮壁から受ける反動圧に対する抵抗運動は、羊水内での重力除去環境の経験であり、児の示す運動の支持面が子宮壁全体であり、重力環境下と大きく異なる。

子宮内での胎児の運動を保障するには、それが可能な子宮内環境を整えることが重要である(図2.3)。

図2 豊富な運動が保障される子宮内環境
図2 豊富な運動が保障される子宮内環境
図3 豊富な運動が保障されない子宮内環境
図3 豊富な運動が保障されない子宮内環境

 

生後の正常運動発達獲得のためには、重力に適応し運動するための筋収縮の支点を体内に作り出す経験を積む必要がある。また、比較的身体深部にある姿勢固定のための単関節筋群(抗重力筋群)と、浅層にあり運動を受け持つ多関節筋群(運動推進筋群)の分化が必要である。

運動障害がある乳幼児は、回旋運動やリズミカルな呼吸運動に関与する腹斜筋、腹横筋や肋間筋群、及び、積み重なる脊椎一つ一つの固定をつかさどる筋束の短い固有背筋群の収縮に欠ける。代わりに肩甲挙筋、大胸筋、広背筋、腹直筋、最長筋といった、本来四肢体幹の運動を保障する長形筋群と床との間で、姿勢の固定と運動を同時に行おうと努力する。

これらの姿勢保持機構や運動様式は、決して大脳皮質や大脳基底核障害による反り返りなどではなく、重力下において残存機能を効率的に利用した児なりの運動戦略であり、室内環境(照明、雑音、温度、床やベッドの弾性など)を変えることで児の外界に対する表出も変化するといった事実が、このことを示唆していると指摘されている*3)。

図4は在胎40週での姿勢の比較である。子宮壁で守られていた正期産児は上・下肢を屈曲しているが、重力に抗する筋力の十分でない超低出生体重児は非対称性緊張性頸反射(ATNR)に支配された非対称なポジションをとっている。

図4 在胎40週での姿勢の比較
図4 在胎40週での姿勢の比較

 

低出生体重児では、形態学的神経学的未熟性と母胎内の運動経験不足や生後の重力不適応で、生理学的過剰反応を呈することが知られている。生理的安定を図るためには全体を適度に包むような配慮が必要である。胎内を再現するようなイメージでなるべく全身均一に支えられれば、児の安心を得られやすい。単に背面だけを枕や膝下クッションで支えるより、しっかりと抱っこすることや、バスタオルでくるむようにすることなどが、より有効である。