骨盤ケアで改善! PART9発達外来の子どもから見えてくる胎児姿勢・新生児ケアの重要性 ④

Ⅲ.発達外来を受診する子どもたちの困り感

乳児院の健診では、頸部・上肢帯の筋緊張・反り返りが強く向きぐせがあり、頭部の回旋が苦手な児にしばしば出会う。

「反り返りの強い児を中枢性協調運動障害児として、外来で経過観察したが、不器用は個人差の範囲で、療育せず、脳性麻痺になることはなかった」と報告している小児科医もいる*8)。しかし、反り返りの強い児にポジショニングの指導が必要であるとの記述は見当たらず、残念である。

次に原始反射である構え反射の遷移(図9)と、保護伸展反応(パラシュート反応)の遷移(図10)を示した*9)。

図9 3種類の構え反射の遷移
図9 3種類の構え反射の遷移A: 非対称性緊張性頸反射 (ATNR)= 頭部の回旋に伴い顔と同側の四肢が伸展、反対側の四肢が屈曲
B: 対称性緊張性頸反射 (STNR)= 頸部の伸展に伴い上肢が伸展、下肢が屈曲
C: 緊張性迷路反射 (TLR) = 仰臥位では伸展筋群、腹臥位では屈曲筋群の緊張が亢進
図18 保護伸展反応
図18 保護伸展反応これは転倒から身を守るための反応。まず前方(A)、側方(B)、後方(C)と発達する

 

私自身、原始反射は乳児期に自然に消失し、立ち直り反応、保護伸展反応を獲得して、安定した座位・立位・歩行が獲得できると思い込んでいた。しかし2001年、1歳半をすぎてしっかり歩行していた次女が、座位で後方に頭打ちし、後方のパラシュート反応が出ていないことに気づいた。

その後、保健センターの乳幼児健診で保護伸展反応の出現状況を確認するようになり、 2004年Medical tribuneで紹介された、Teitelbaumの論文に出会った*10)。

生後 6 か月の全乳児に傾斜試験(頭部垂直化反応)をルーチン実施すると,アスペルガー症候群(以下ASと略)児の多くを早期に発見し,治療できるようになるだろうというものである。全患児にすべての運動異常が存在するわけではないが、予備的観察から,ASに特徴的な“ぎこちなさ”の一部は,乳児反射の脱線に基づいていると考えてよいだろう。また、乳児反射は観察が容易で,早期発見のための徴候として使用できる。このような反射が長く持続し過ぎるか、あるいは発現すべき時期に発現しなければ、乳児の運動発達、続いてその他の行動的側面が影響を受けるだろう。

つまり、AS と自閉症の神経発達異常のマーカーとして、乳児反射を使用すれば容易に早期発見できるのである(図11)。

図11 後にアスペルガー症候群と診断された児
図11 後にアスペルガー症候群と診断された児

 

発達外来では、小児精神科からPDDと言われる自閉症圏(自閉症スペクトラム)や、AD/HD児をご紹介いただいている。その児の多くは不器用や体のバランスが悪く、自閉症の児の親からは「視線が合わない」との言葉をよく聞く。

アメリカ精神医学会の診断基準(DSM-IV-TR)ではPDDの診断を優先し、発達性協調運動障害(Developmental Coordination Disorder: 以下DCD)の病名を併記しないことになっている。麻痺などのはっきりした器質的な疾患がないにもかかわらず運動能力に問題のある子どもたちはDCDと呼ばれる。日本における有病率は不明であるが、DSM-VではDCDの有病率は5~11歳の子どもの6%に達すると見積もられ、性比は4:1で男児に多く、低出生体重児に有意に高率に見られること、特にAD/HDとの併存は約半数にみられ、PDDとの併存も高率と報告されている*11)、12)。

出生時に第一回旋や胎位・胎勢の異常、不正軸進入などのためか、出生後の不適切なポジショニングのためか、正中位指向とアライメントの発達が十分でない児が目立つ。向きぐせが残存して片側の頭部が変形している児や、左右どちらにも向けずに正面ばかりむいていると短頭(ぜっぺき)になっている児がいる*7)。特に、左右の向きぐせのある児は体幹と顔の正面が一致せず、視線が合わせづらく、追視や眼球運動に問題が生じている。