骨盤ケアで改善! PART9発達外来の子どもから見えてくる胎児姿勢・新生児ケアの重要性 ⑥

Ⅳ.世代間で伝達しなくてはいけないこと

健やかな産褥経過のため、特に4ヶ月検診までの関わりがその後の発達に与える影響を考えると、退院時指導として、母親に乳幼児期の発達の概要を知らせることは大切である*6)。妊婦健診の段階から抱っこできる体作りの指導は重要である。また、退院時指導としてぜひお伝えいただきたいこととして

1.首が座るまでの児の抱き方

児の体をできるだけ水平にして、必ず首と頭を支えることが大切である(図15)。首がすわる前の児は、体の中で一番重い頭を支えるだけの筋肉や骨が十分に育っていない。首がすわる前から立て抱きにすると、重い頭や胴体を支えようとして、未熟な腹筋や背筋に力が入りすぎて体が緊張する。この緊張を続けていると、体に「反り」や硬さ(図16)となって現れることがあるため、児の発達に即した抱き方をすることが大切である*16)。おひな巻きやタオルハンモックで、姿勢コントロール・身体概念(ボディイメージ)・情緒の安定の前提条件となる生理的屈曲を保障し、母子がお互いにまっすぐに視線を合せることが、愛着形成の一歩を踏み出すうえで重要である。

図15 良い抱き方
図15 良い抱き方
図16 良くない抱き方
図16 良くない抱き方

2.手遊びや「高い高い」「おしくらまんじゅう」などの体を使った遊びで発達を促す

3ヶ月で下肢の反復運動ができると、口から声を出し、4ヶ月で下肢の反復運動と笑いが同期して、声を出して笑う。6ヶ月で過渡的喃語(母音のみアー、アーなど)は上肢の反復運動と同期し、笑い声と一緒に出て、周波数も一致する。この時期に歌を歌いながら「かいぐり・かいぐり・おつむテンテン」などの手遊びをすることが、運動発達だけでなく言語発達を促す意味でも大切である*4)。図17は、短時間の遊び(かいぐりや下肢のぎっこんばったん)によって、反り返った air plane状態から、体幹ひねりや、おもちゃに手を伸ばすことや、足をつかんで遊んだりすることが可能となったことを示している。

図17 「はいはい」や足を持ってのひとり遊びなどをたっぷりと
図17 「はいはい」や足を持ってのひとり遊びなどをたっぷりと

 

正木はさらに、側弯症が発症しやすい時期として「おすわり」をする生後6カ月ころ、「立っち」ができる9カ月ころ、歩けるようになる18 カ月ころと指摘している。乳幼児であっても、やはり重い頭をささえるだけの「筋力」が必要で、日本では昔から赤ん坊に「高い、高い」をしたり、畳などの上で「はいはい」をたっぷりさせたり(図17)、自分から立ち上がって自然に歩くようになるのを待つ育児をしてきたと指摘している。これは自座位ができるようになる前にセット座位にすると、寝返りや這うなどの運動の流れの中で、立ち直り反応や保護伸展反応が獲得できなくなってしまうことを意味している。

おんぶの仕方も「背骨が垂れる」ような形であるため、日本の子どもは側弯症になりにくいのだと国際的に高く評価されていたが、いつの間にか、「側弯症がおこりやすい」育児、つまり乳幼児の胴体に筋力がつかない育児に変わってしまったことは残念である。

筋力が低下した大人は、子どもを「高い、高い」することもできなければ、児も筋力をつける機会を失う。学校体育の指導者や行政関係者に「腰の力をつける」という意識がほとんどなく、「体力が落ちている」と言われれば、「とにかく走れ」というイメージで物ごとが進められ、適切な対応がなされてこなかったことを正木は体育教育の当事者として反省している*1)。

正木は、「背筋力は、おそらく1週間に1回10 秒程度、全力で力を出す運動(じゃんけんで負けた子が勝った子を背負って歩くような遊びや、タオルでの綱引きなど)をすれば、現状維持から少し上向く」と提案している。立ち直り反応や保護伸展反応などを引き出す効果もあると思われる。

また、体を触れあい、とっ組みあって遊んでいると子どもは強く興奮する。けれど、あまり興奮が強いと友だちが泣いたりするので、グッと自分を抑制する面も育つため、「おしくらまんじゅう」など昔から子どもたちがやってきた「接触型」の遊びの重要性が指摘されている*1)。これらの遊びを通して立ち直り反応や保護進展反応を乳児期に獲得させるのが“手塩にかけた子育て”といえるのではないだろうか。

 

結語

発達のつまずきは、体の使いにくさ、作業の非効率、転倒などによる怪我から体を守りにくくなるなどの多くのハンディにつながり、予防医学的にも大きな問題である。発達のつまずきを固定化させないためには、原始反射の残存と、姿勢反射の獲得状況を正しく知ることと、問題の早期発見が大切である。

問題が見つかった時点で、できるだけ早くから発達を促すための保育ケアが必要であるにもかかわらず、適切で良好な保育ケアを提供できる体を持たない母親・助産師・看護師・保育士が多い。子どもの成長発達に大きな影響を与える女性の体作りは、胎児が成長する子宮内環境の改善にもつながる。

また、これ以上「育児能力の低下した社会」を作らないために、母子の体作りを基盤とした子育て支援・乳幼児保育・体育教育の充実を図ることは緊急の課題である。

思春期の性教育を介して保健・体育教育との接点があり、女性の生涯にわたる健康教育・母子保健のキーパーソンとしての助産師の皆さまの活躍を応援しております。

 

引用文献