厳しい妊婦体重管理は必要か?― DOHaDと先制医療から考える ②

Ⅲ.出生体重の低下と腎臓糸球体・ネフロン数の減少

出生体重の小さい人は高血圧、IgA 腎症、慢性腎症、CKD(Chronic kidney disease)等の腎臓疾患発症リスクの高い傾向がある。ヒトでは、妊娠6ヶ月~9ヶ月で腎臓糸球体・ネフロンが形成され完成する。出生後には腎臓糸球体が新たに形成されることはない。
出生体重が小さい場合には腎臓糸球体数が少なく、少ない腎臓糸球体には負荷がかかり続けるので、代償性に肥大して機能していく。

しかし、時間の経過と共に負荷に対応できなくなり、やがて腎硬化症、腎不全等を発症していく可能性が高い。特に小さく産まれた男性では35 歳頃から高血圧の発症例が多くなることはそれを示している。腎疾患以外で亡くなった小児の剖検例で、腎臓糸球体数の検討が行われている。その結果、出生体重の小さい場合は、腎臓糸球体数が少ないことが確認されている。
一つの報告例を示すと、出生体重が3,000g 以下となると、直線状に腎臓糸球体数の低下が認められ、同時に腎臓の糸球体数が少なくなると、腎臓糸球体は代償性に肥大して腎臓糸球体濾過量の増加することが示されている(Compensatory glomerulomegaly and hyperfiltration 現象)(図1)。

図1 出生体重と腎臓糸球体の数及び体積
図1 出生体重と腎臓糸球体の数及び体積 7)非腎臓疾患死亡児の剖検による検討。●は単体児、○は双胎児を示す。
左図は、腎臓糸球体数と糸球体体積の相関を見たもので、糸球体数の減少に伴い体積の増加すなわち代償性の肥大が起こっている。

Barry M Brenner は、「本態性高血圧は、腎臓糸球体・ネフロン数の減少により起こる。この数の減少は、望ましくない胎生期の子宮内環境(低栄養、ストレス、環境化学物質曝露)や遺伝要因、早産等により生ずる。ネフロン数低下は腎臓糸球体の肥大を起こし、やがて高血圧、CKD、腎硬化症、腎不全を発症するに至る」というブレンナー説が提案されている(1989 年)。

現在その腎臓糸球体数の減少機序が解明されてきている。それ故、腎臓糸球体の形成される妊娠中の栄養の重要性は腎臓糸球体の形成にも極めて重要であることが理解できる。妊娠前から妊娠全期間を通じての栄養の重要性が示されているのである。

望ましくない胎内環境では胎児に病気の素因が作られ(First insult)、その素因に過栄養、過剰なストレス、運動不足等が加わる(Second insult)ことで、病気が発症するのである。現在社会はこれら望ましくない生活環境に取り囲まれており、病気の素因を持って生まれた児には発症リスクがより高い時代となっている。それだけに胎児期の栄養の重要性がますます高くなっている。