骨盤ケアで改善! PART7当院における新生児ケアのご紹介 ④

5. 新生児搬送

新生児搬送となった児は、2010(平成22) 年は1年間で4人。出生数は613なので0.65%。搬送理由は4人とも呼吸障害。2人は帝切出生、うち1人は双胎の1人で 低血糖を伴っていた。経膣出生の2人とも吸引分娩で出生し、2人とも熱発を伴っていた。

6. 股関節の開排制限と股関節脱臼

向き癖や股関節開排不良の児は小児科医が診察後、育児方法についての指導依頼が直接私に来るので、私が抱き方や寝かせ方、緊張した筋肉の緩め方などを母親に指導している。

当院では1か月健診以外に、後期健診(生後8カ月~ 1歳)も実施しているが、小児科医によると、股関節脱臼を指摘された子は、この5年間で一人もいないとのことである。また、次の出産時などで母親から「この病院で出産した子が股関節脱臼になった」との声を、私たちが聞いたことも一度もない。

Ⅲ. 妊娠期からの保健指導の重要性

出生直後にもかかわらず顔のゆがみや、向き癖、体幹のねじれ、四肢伸展の児を多々見かけ、胎勢はどうだったのかと考えさせられることが増えて来たと感じる。そのため、なるべく妊娠の早い時期から、母親教室での集団指導や、個人指導に力を注いでいる。

母親教室では妊娠期から「赤ちゃんを良い環境の中で育ててあげるには、母体を健康にしなくてはいけない。そのためには骨盤ケアが大切」と伝え、身体の痛みや不快症状を緩和し、身体のバランスを改善するための体操や骨盤輪支持実習をしている(写真11)。

写真11:母親教室で骨盤ケアの大切さを伝える
写真11:母親教室で骨盤ケアの大切さを伝える

 

腰痛や恥骨部痛などの症状を訴える妊産婦には、当院では助産師がトコちゃんベルトⅠ・Ⅱ、妊婦帯Ⅰ・Ⅱを着用指導しながら妊産婦にお渡している。その品をカルテに記入し、事務で会計処理される。

しかし、母親教室や助産師外来で私と出会うことなく、胎児が膝伸展姿勢であるにも関わらず、私に出会った時にはすでに妊娠後期となっているケースも残念ながらある。写真12もそんなケースであり、膝を強く伸展させた単殿位で帝切出生直後の児である。保育器内でも、背部を丸く膝が屈曲するように手当とポジショニングを工夫することにより、徐々に良好な姿勢に近づく(写真13)。このように単殿位から帝王切開になるケースがないよう、妊娠期の保健指導をより充実させていきたい。

写真12:単殿位で帝切出生直後の児
写真12:単殿位で帝切出生直後の児
写真13:背部を丸く膝が屈曲するように手当とポジショニングをして95分後。膝は直角くらいに屈曲してきた
写真13:背部を丸く膝が屈曲するように手当とポジショニングをして95分後。膝は直角くらいに屈曲してきた

 

Ⅳ. まとめ

他の出産取り扱い施設で働いた経験のある助産師から「ここは光線療法が少ない。緊急帝王切開が少ない。新生児搬送が少ない、、、」との声をしばしば聞いていたが、今回、これらの数値を見つめて「それって当たっていたんや」と私の中で、今まで実践してきたことに確信を持つことができた。

新生児が順調に胎外生活に適応できているのは、児が良好な胎児姿勢を保つ“まん丸おくるみ”が最も大きく関与しているのではと考える。

また、胎児が健康に育つ子宮になるようにと、妊婦への骨盤ケア指導を重視してきたことが、妊娠分娩経過や児の成長発達を順調なものとする礎となっていると思う。健康で育てやすい子どもを生み育てるためには、良好な胎勢を維持できるよう援助することが肝要であり、それを可能とする産科医療のシステム作りが重要であると思う。

全ての母親が育児を楽しめるよう、鈴木先生や皆さま方と意見を交換し、より良い母子ケアを皆さんと共に目指したい。

 

参考文献